■『燃えよドラゴン』エキストラが笑う問題のシーンを発見
ブルース・リーの『燃えよドラゴン』は、言うに及ばず世界的に記録的大ヒットをしたアクション映画の金字塔で、その後のアクション映画に多大なる影響を与えた作品ですが、カラー映像のクォリティが気になりました。ほぼすべてのシーンがテクニカラーで撮影されたそうですが、キメが粗く、映像がクリーンではないのです。その分ブルース・リーの華麗な格闘アクションで相殺された感がありますが、映像がもっと鮮明だったら、と思うと、少し残念ではあります。その後は「デジタルリマスター版」「4K上映」などリバイバル上映のたびにあの手この手でカラーの質を向上しようという、映画関係者の努力の跡がうかがえます。
『燃えよドラゴン』のシーンの中で気になった点をお話すると、これはファンなどがよく指摘する有名な話ですが、ブルース・リーがハンの手下の1人を連続キックで倒すシーンで、なんと背後で手下の1人(エキストラ)が笑っているのです。「これ、NGじゃないの? このシーンは笑うところじゃないでしょう」と思ってしまうほど。大学時代、すでに100回ほど『燃えよドラゴン』を観ていた私ですが、まだその「問題のシーン」には気づいていませんでした。友人とたまたま一緒にビデオを観ていた時に、「ほら、ここだよ」と彼が指摘してくれ、気が付きました。「確かに笑ってる・・・」。絶句しました。また、別のシーンでは、ハンが「夜中に外出し侵入した輩がいる」と深刻な表情で話しているにもかかわらず、ブルース・リーの真後ろで複数のハンの手下が談笑している場面にも、苦笑するしかありません。
そのほか、個人的には、宴会のシーンで中国の伝統楽器で意気揚々と演奏している男性が、カメラのクローズアップとともに視線がおぼつかなくなり目が泳いでしまっているのには、自信なさげに映り、ちょっと残念。
しかしながら、ブルース・リーのアクション、さらには独自の編み出した武道哲学(ジークンドー)なども交えた一大エンターテインメントであることは間違いなく、上記のシーンはご愛敬、ということで、ファンとしては余裕をもって受け入れたいものです。
■『燃えよドラゴン』オープニング・クレジットに主演2人?
あともう1点だけ付け加えたいのですが、香港島のビル群(超高層ビルが所狭しとそびえ立つ現在の香港島とは大きく異なっています。50年近くも前ですから)を背景に『燃えよドラゴン(Enter the Dragon)』のオープニング・クレジットが格好良く出てくるのですが、その前に主演俳優の名前が紹介され、「Starring(主演)Bruce Lee, John Saxon(ジョン・サクソン。白人の「ローパー」役)」と出てきます。でも、これは「Starring Bruce Lee」だけで良かったのでは。ジョン・サクソンは、出演場面もセリフもそれなりに多かったのですが、正直「主演」とするには無理があります。存在感は、圧倒的にブルース・リーのほうが勝っていますが、あのクレジットを観るとブルース・リーと同等に扱われています。
ちなみに、主演俳優(女優)が2人同時にクレジットされたハリウッド映画は、『燃えよドラゴン』以外は、あまり記憶にありません。基本的に主演は1人であり(2人の場合も勿論あるとは思いますが)、準主役、脇役などが、出演シーンの多い順に1人ずつクレジットされていきます。これが一般的だと思うのですが、当時のハリウッド制作陣としては「白人も活躍している映画だから観てください」と言わんばかりの苦肉の策だったのでしょうか。『燃えよドラゴン』に対する観客の受けがいかほどのものか(ヒットする作品かどうか)未知数であったことがうかがわれます。
と、ここまで書いてきて、先ほどウィキペディアで『燃えよドラゴン』を調べたら、ブルース・リーとジョン・サクソンが同時に主演としてクレジットされた理由がなんとなく分かりました。どうやら「脚本」が関わっていたようです(詳しくはウィキペディアで検索してください)。
■ブルース・リー本人は映画の出来に満足
ともあれ、『燃えよドラゴン』は、空前の大ヒットを記録。ブルース・リーは、爆発的ヒットを知らずしてこの世を去ってしまったわけですが、彼自身、生前に完成作品を観ていたようで、出来上がりには大変満足していたようです。間違いなくヒットを確信していたことでしょう。■