■『燃えよドラゴン』リメイクをめぐる報道から3年
2018年、ブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』(1973)のリメイクについて『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督が交渉中であるとの報道が「Deadline Hollywood News」よりなされたようです。先日ネットでその記事を読みました。2018年といえばブルース・リー没後45周年にあたる年でした。あれから3年が経過しましたが、現在『燃えよドラゴン』のリメイクの話は少しも聞こえてきません。コロナ禍の真っ只中で映画制作自体が本格的に実施しづらい事情もあることでしょう。もしかしたら、水面下で着々とリメイクへ向けた取り組みが進んでいるのでしょうか。
■リメイク版はそれなりにヒットするかもしれない、しかし・・・
資金の豊富なハリウッドのことですから、仮に『燃えよドラゴン』のリメイク版を、それなりに名の売れたアクション俳優、それなりにしっかりしたスタッフでCG等を駆使して制作・公開すれば、そこそこヒットはするのではないでしょうか。過去を振り返れば、『ゲッタウェイ』『ミッドウェイ』『許されざる者』など多くの名作のリメイクがなされ、それなりのヒットを記録してきました。
■やはりオリジナル版がいい?
ただ、『燃えよドラゴン』に関しては、事情が大きく異なるようです。仮にリメイク版が公開されても、その作品自体に面白さ・凄さなどを感じるとしても、最後に「でも、やっぱりブルース・リーのアクションだよな~」と虚しさに近いものが残る(とくにファンにとっては)ことも想定できます。そして、「よし、自宅へ戻ってDVDでオリジナルの『燃えよドラゴン』をもう一度見直そう」となりそうです。オリジナルを見直した結果、「やはりオリジナルが最高!」「リメイクは観るべきではなかった」となり、リメイクとのギャップを一段と感じる―なんてこともあり得るのではないでしょうか。個人的にはリメイク版制作には、どちらかというと否定的です。第一、リメイクで、ブルース・リーの編み出した格闘技コンセプト・ジークンドーの神髄がどこまで正確に描写できるのか、はなはだ疑問でもあります(哲学的な部分までリメイク版に反映するかどうかは、わかりませんが)。
実際、2018年当時のリメイク報道の後、ネット読者から「リメイクなんてとんでもない! そんな無意味なことは即刻やめるべきだ」と、ブルース・リーへの冒涜にあたるとでも言わんばかりの厳しい投稿がありました。そのほか「幼少時からブルース・リーの虜になり、ブルース・リーの出演した作品はすべて観ている。(『燃えよドラゴン』リメイクによって)彼のレガシーを葬り去るようなことには、なってほしくない」「NO(絶対リメイクはするな)!」と否定的な意見ばかり。「ハリウッドさんには幸運を祈るよ」と皮肉をこめた冷ややかな意見もありました。各人がブルース・リーに対してそれなりの熱い思い、意見などを持って確固たるヒーロー像を抱いているようです。ハリウッドも営利団体ですから「リメイクがヒットしてお金が儲かれば、問題はない」という気持ちはわかるのですが、とくにファンにとっては、そのレベルで大事なブルース・リー像を汚してほしくないことが、これらのコメントから痛いほど伝わってきました。下手にリメイク版を制作しないほうが無難だと思われますが、果たして動向は如何に?■