■アメリカの人種差別意識は変わっていない?
コロナ禍が長期化する様相を呈する中、アメリカでアジア人・アジア系に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が後を絶ちません。中国人、日本人などに関係なくアジア系だとわかると無差別に暴力を加えたり嫌がらせを与えたりののしったりしています。比較的アジア系コミュニティのしっかりした温和なイメージのあるシアトルでも、日本人が暴行され重傷を負ったというニュースを聞き、胸が痛むと同時に、アメリカ人の人種差別意識、もっと言えば白人至上主義的な考えは、いまだに変わっていないことを認識せざるを得ません。もし人々の多様性・調和を重んじていたブルース・リーが今も健在でヘイトクラムが多発する状況を見れば、怒り心頭に発していたことでしょう。ブルース・リー自身、ハリウッド時代になかなか満足な役をもらえず差別を受けさんざん苦労してきたのですから、なおさらのことでしょう。
■コロナ禍長期化、鬱屈した人々の反応が表面化
コロナ禍が1年以上も続き、行動制限が課せられ、ソーシャルディスタンスで思うように自由に人と接することもできない(とくにアメリカではスキンシップが当たり前の文化ですから)となれば、多少なりともフラストレーションがたまるのは理解できます。最初にコロナが広がったのは中国ですから、同国が発信のような格好となって全世界へコロナが拡散したことで、中国人(=アジア人)に対して憎悪を抱く構造になっていると思われます。しかしだからといって、当然ながら無差別に暴力をふるっていいわけではありません。現在ではオンライン(リモート)でPCなどの画面を通してですが、人の顔を見ながらコミュニケーションができ、SNSを利用して自由に連絡、情報法交換もできるようになっています。当面はコロナが収束するまでの辛抱ですが、人々との「触れ合い」はこうしたやり方でもできるのです。そこで、自分の現在の思いや悩みを打ち明けたりできます。要は、異なった人種、民族同士がじっくりと面と面を向かい合って意見を出し話し合うことが必要不可欠ではないでしょうか。そうすれば、偏見や憎しみをもつことなくお互いを尊重しながら生きていくことができるのでは。少なくともむやみに暴力を行使することはなくなるのではないでしょうか。
■アジア系コミュニティは一致団結を
アメリカのアジア系コミュニティは、ヘイトクライムのこれ以上の増加を防ぐためにも、地元議会などに陳情書を提出して当局が罰則強化等の条例を出したり規制をかけるなどアクションを起こしてもらうといった、一致団結した活動をすべきではにないでしょうか。デモを起こすのも1つの手段だと思いますが、下手に実施すると、たとえば白人至上主義団体などに目をつけられて暴動に発展する可能性もなくはありません。ヘイトクライムの防止法はほかにもあるでしょう。コロナ禍の「二次災害」的な動きに発展してしまった状況は、かつてアメリカで数年生活していた私にとっても、非常に残念なことです(ちなみに私自身は、ヘイトクラムの被害にはあいませんでした。差別的待遇を受けたことはありますが)。アメリカ社会の歪んだ側面を再び垣間見た気がします。■