■米ソ冷戦期における宇宙開発戦争、最初に犠牲になったのは「犬」だった
オーストリア・ドイツ合作のドキュメンタリー映画『犬は歌わない』の予告編がYouTubeで公開されています。米ソ連戦時代(アメリカとソ連〈当時〉どちらが世界の覇権国として優位に立つのか競争が激化した時代)において核実験と同じく熾烈を極めたのが、宇宙開発競争でした。その競争の最初の犠牲者はなんと「犬」だったのです。1957年野良犬だったライカ犬がソ連の開発した人工衛星「スプートニク2号」に乗せられ、地球を旋回しました。映画は、当時のソ連の宇宙開発の貴重な映像、犬目線で撮影された映像を提供し「宇宙開発や理不尽な暴力、犬を取り巻く社会」を映し出す作品として、6月12日より東京のシアター・イメージフォーラムで公開されるほか大阪・京都・名古屋などでも上映されるそうです。
■犬好きとしてはかわいそうに思う
ソ連は、スプートニク2号にライカ犬を「実験台」として乗せてから、1961年にガガーリンが人類初の有人宇宙飛行を成し遂げるまで何度となく犬をロケットに乗せているそうです。犬好きの私としては、取り扱い方がちょっと残酷な感じがします。動物愛護団体から文句が出てきそうです。以前、CNNで放映していた「COLD WAR」というドキュメンタリー番組で、ソ連がライカ犬をロケットに乗せたことに対し、アメリカ人にインタビューしたときの映像が流れていましたが、確か「あんな狭い空間に犬を乗せて宇宙へ行くなんて、かわいそうだ」と話していたかと思います。私も同意見です。
■ドキュメンタリーとして「視点」の持っていき方がユニーク
予告編では「犬の目線で現代社会を見つめる」とクレジットが出ており、犬自身(モスクワの街を徘徊する野良犬たち)が今の世の中・社会をどのようにとらえながら生きているのか興味がわくところです。ドキュメンタリーとして「視点」の持っていく方向が人間ではなく犬であるところに、ユニークさを感じます。犬は、当たり前ですが話すことができないだけに、表情や仕草などから価値観・社会観を推測するしかないでしょう。実際に作品を鑑賞するまであと2カ月ほど待たねばなりませんが、予告編を観た限りでは、犬の吠える姿、様々なシチュエーションで見せる表情、じゃれ合うなど活発な動きを通して、社会の抱える矛盾等に気付かせる効果があるのかもしれません。『犬は歌わない』のタイトルの意味するところを理解するキー・ポイントにもなりそうです。■