■ブルース・リー「どう生きるか」を考え、実践
医学の格段の進歩により、最近は「人生100年時代」という言葉ををよく耳にするようになりました。高齢者で90歳代でも元気な人は結構います。電車の中などで縁があって老人と話すと声も大きくはきはきしているので、年齢を尋ねたら「とてもそんな年には見えない」と驚くことがあったり――などの経験は、一度や二度はあるでしょう。長生きしている人は、その間苦楽含めいろいろな経験・体験を積んだ人生の大先輩であり、長寿自体に尊敬の念を抱いています。
一方で、たとえ短い人生である(あった)としても、その人生が充実したものであれば、問題はありません。後悔は勿論したくはありません。「どのように生きる(生きた)か」も重要なことに思えます。ご存じのようにブルース・リーは32歳という若さでこの世を去りました。あまりにも早い死です。しかし、彼は常に「どう生きるか」を考え、実践していました。そして、自分自身をとことんまで知り尽くしできる限りのことを実践し生を全うしたのではないでしょうか。
■「人生とはずっと続くプロセスであり、ずっと更新していくものである」
ブルース・リーの格言の中に「self-knowledge(自己認識、自覚)」という言葉が出てきます。ブルース・リーの書き残した膨大なメモをまとめたジョン・リトルの編集による『BRUCE LEE ARTIST OF LIFE』を読むとself-knowledgeの項目があり、「真実は、人生とはずっと続くプロセスであり、ずっと更新していくものである、ということだ」(p227、Yazブログ訳)と書かれています。生きていくなかでは、成功し自信に満ち溢れることもある一方で、挫折に打ちひしがれてどうしようもない時期を迎えることもあります。とくに挫折や停滞のなかで、いかに軌道修正を図り試行錯誤を繰り返し、自分なりの生き方を見出していくかが、非常に重要になってきます。
よく言われることですが、「自分のことは自分自身が一番よく知っている」はずが、意外に分かっていなかった――という人は少なくないでしょう。私もその1人でした。ただ、私も、仮に人生100年とするなら、50を超え今や折り返し地点に立っています。そこで、はっと気づいたのです。「自分自身にはself-knowledgeが十分ではなかった」と。いま私がこうしてブログを書いているのもself-knowledgeを開花させるためなのです。勿論皆さんにブルース・リー・ワールドの素晴らしさを知ってもらい幸せな人生を送ってほしいという願いもあってのことでもあります。
■クリシュナムルティの『The Book of Life』で「はやく自己認識を」
ブルース・リーは、アメリカのワシントン大学で哲学を専攻し、ありとあらゆる哲学者・思想家の本を片っ端から読み自身の人生や独自の武道哲学に生かしていたのは有名な話ですが、とくに強い影響を受けた思想家の1人にジッドゥ・クリシュナムルティ(インドの哲学者)がいます。私も彼の著作をアメリカ留学時代に1冊だけ読んだことがあり、今でも大事に自宅の本棚にしまっています。『The Book of Life』というタイトルの本ですが、最近、20年ぶりにもう一度読んでみようと思いページをめくると、self-knowledgeの言葉が随所に散りばめられており、「はやく自己認識せよ」と強く諭されているような感じがしました。ちなみに、『The Book of Life』は、比較的平易な英文で書かれており、お薦めです。クリシュナムルティの本を読みたいと思った人は、入門編としてまずこの本を読むとよいのでは。読み進めるうちに気付くと思いますが、ブルース・リーの表現する格言、文体と似通っている箇所があり、思わずニヤリとしてしまいます。クリシュナムルナティの影響を強く受けたことがうかがわれます。■