■『ドラゴンへの道』効果音がこんなところにあった!大きな発見
ハリウッドの西部劇『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』という映画をご存じでしょうか? 私は、1か月ほど前に都内の映画館で初めて見たばかりです。ガンマンが銃を撃ちまくるという単純なものではなく、「生きるとはどういうことか」と非常に崇高なテーマで描かれた一大叙事詩ともいうべき傑作です。監督は、あの『荒野の用心棒』でクリント・イーストウッドを一躍スターダムにのし上げたセルジオ・レオーネ。1968年の作品ですから、50年以上も前の映画。私がちょうど生まれた年です。。
映画好きの私にとって西部劇(ウェスタン)は以前は、そんなに数多くは観ていなかったのですが、ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)にはもともと興味があり、彼らが出演している(悪役として描かれていますが)西部劇に徐々に興味を持つようになり、前述の『荒野の用心棒』のほか『駅馬車』『黄色いリボン』『ワイルドバンチ』などを映画館・DVD等で見るようになりました。今回たまたま時間があったので、日本初公開時よりさらにシーンを追加したオリジナル版『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』を映画館で見る機会を得ました。
その映画で大きな発見がありました。それは、ストーリーがどうの、出演俳優がどうのではなく、バックに流れる「音楽・効果音」です。銃撃シーンで「ビ~ン、ビ~ン、ビ~ン」と薄気味悪く響き渡る効果音が流れてくるのですが、「これ、なんかどこかで聞いたことあるな」と思いました。そうです、これは『ドラゴンへの道』でチャック・ノリス演じる悪役コートが登場するシーンに流れていた効果音そっくりそのままだったのです。コートの登場とともに流れていた効果音は絶妙で、「ブルース・リーをやっつけてやるぞ!」と言わんばかりの迫力が倍増する効果をを出していた感があります。また、『ドラゴンへの道』でブルース・リーがコートと闘うためローマのコロッセオ(コロシアム)に向かうシーンと、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』での銃撃シーンで、その効果音が流れましたが、『ドラゴンへの道』のコロッセオでの対決シーンそのものが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』を意識して撮影されたことがうかがわれます。
■『ドラゴンへの道』の口笛は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』のテーマ?
さらに、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』で美しい響きを奏でるメイン・テーマは、荒々しい西部劇のイメージよりもむしろ、「切ないながらも前進していこう」的な感情を呼び起こさせる効果を与えるものでしたが、これにも「発見」があったのです。これも『ドラゴンへの道』(広東語版)のワン・シーンですが、マフィアのアジトに乗り込んで救出に行くシーンでブルース・リーが口笛を吹きながら登場するのですが、その口笛の音楽が『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』のメイン・テーマによく似ていたのです。そっくりとまで言い切ることはできませんが。もしかしたら私の勘違いかもしれませんが、もし本当にブルース・リーが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』のあの音楽を口笛で奏でていたとしたら、相当この映画の影響を受けていたのでは。これらは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』を見なければ気づけなかった、私にとっての「大発見」でした(ちなみに、『ドラゴンへの道』英語版では、口笛は、まったく別の音楽に吹き替えられていました)。
■ブルース・リーの「充電」期間中に活力源を与えた作品
ハリウッドで活動していた頃のブルース・リーは、おそらく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(だけではないと思いますが)で映画制作のノウハウなどをしっかりと学んでいたのでしょう(ちなみにクエンティン・タランティーノ監督も、この作品に大いに感化されたそうです)か。撮影現場での経験などを通し、演じることのあり方に加え、「どのようにしたら観客をひきつける作品を世に出せるか」などと考えながら粛々と勉強を続けていたことがうかがわれます。結局、ブルース・リーは、ハリウッドでの活動を半ば諦める形で香港に凱旋することになります。そして、『ドラゴンへの道』含む一連の作品に出演し大成功を収めましたが、ハリウッドにおいて『グリーン・ホーネット』で華々しいデビューを飾ったもののその後苦難の連続だったアメリカ時代が、逆にブルース・リーを大きく飛躍させる原動力になったのは間違いないでしょう。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』は、ブルース・リーの「充電」期間中に大いに活力源を与えた作品の1つなのではと思えてきます。■