■「自己を正直に自由に表現する」ことが人生で極めて重要
ブルース・リーは、数々の名言・格言を映画、インタビュー、自著等で残しています。「考えるな、感じるんだ」は有名すぎて語り尽くされた感がありますが、「自己を正直に自由に表現する」ことが人生において極めて重要な要素の1つであることが、強烈なメッセージとして私たちの心に響いてきます。
「自己を正直に自由に表現する」ことの大切さは、とくに、現在のコロナ禍で自粛モードからいまだ抜け切れていない閉塞感の漂う中、1人ひとりが冷静に自分に落とし込んで「自分はこのままで良いのだろうか」「自分の本当にやりたいことは何か」など「自分探し」をする大きな機会として、私たち1人ひとりに投げかけられているように感じます。例えば、サラリーマンとして毎日朝早く起きて出勤し8時間労働をこなすといった生活スタイル(ルーティーン=繰り返し行うお決まりの仕事)だったのが、コロナで出勤・外出はできるだけ控えて自宅にこもる日々が続き、逆に生活パターンがおかしくなった、調子を崩したと嘆く人も少なからずいたのではないでしょうか。そのような中で自分を改めて見つめ直し、転職を決意したり、全く違った新しい分野にチャレンジしようと思ったりと、この約1年で生活スタイルが大きく様変わりした人もいることと思います。まさに誰からも縛られることなく自己を正直に自由に表現する機会が与えられている昨今ではないでしょうか。
■「自己を正直に自由に表現する」ことは非常に難しい
一方で、「自己を正直に自由に表現する」ことは、ブルース・リーが指摘するように「非常に難しい」ことでもあります。ルーティーンにすっかり慣れた生活を送ってきた人の中には、ある日突然自宅待機・自粛を強いられ「何をすればよいのか分からない」「今後自分自身何をやって生きていきたいか見いだせない」といったケースが想定されますが、これは、毎日お決まりの日々を送るうちにいつの間にか創意工夫しなくなった結果でしょう。ブルース・リーは『Bruce Lee in G.O.D 死亡的遊戯』(2000)でのダニー・イノサント扮するパスカルと対戦する前にこう切り出します。「この竹は、より長くより柔軟で、そしてとても生き生きとしている。あなたのその棒きれを使った派手なルーティーンでは、この竹の素早い柔軟な動きにはついて来れない」。パスカルは2本の棒を派手に振り回してブルース・リーを威嚇しますが、ブルース・リーはそんな動きに惑わされず冷静に、しかも闘う前からすでに勝負はついていると言わんばかりの反応を示します。ここでブルース・リーは「派手なルーティーン(flashy routine)」と言うことによって、「自分の磨いた武術が世界一強いと自惚れ単なる自己満足に陥っている硬直した状態」がいかに愚かなことで危険でもあるか警鐘を鳴らしています。そこには、一見派手で凄そうでも、もはや創意工夫も何もなく見せかけだけのものになり下がっています。ただのんべんだらりと生きるのではなく、いかに日々の生活の中で柔軟に対応し本当に生を謳歌(=自己を正直に自由に表現する)しているかが大事であるかを訴えるブルース・リーの名言の1つと言ってよいでしょう。
■ブルース・リーの名言・格言が方向性を見出すきっかけに
今後コロナによる自粛ムードがいつまで続くのか全く不透明ではありますが、コロナ禍によってある程度は自分の時間ができ、柔軟に多角的に物事をとらえる余裕ができたのは事実です。こんなご時世だからこそブルース・リーの名言・格言が、はっと我に返らせ、自分の方向性を見出すきっかけになるかもしれません。■