『燃えよドラゴン』―ブルース・リーの見事な演出は細部に及ぶ

■『燃えよドラゴン』の「主演2人」はブルース・リーの要求だった

 以前の投稿「『燃えよドラゴン』の数々のシーンを鋭く分析」の中で、『燃えよドラゴン』のオープニングで主演キャストが「Starring Bruce Lee, John Saxon(主演:ブルース・リー、ジョン・サクソン)」と出ていたことに対し、「ジョン・サクソンがブルース・リーと並び主演として紹介されることに対し違和感を覚える」とコメントしました。あれから、他の人の投稿されたブルース・リーに関するブログを読むと、実は「ブルース・リーが制作側に主演をジョン・サクソンも加えてクレジットするよう要求していた」との情報を得ました。

■「ハリウッドで主役になったブルース・リーを見てくれ!」

敢えて主演を2人並べてその後の映画の展開で誰が主演としてふさわしいかが観客が分かるよう仕組んだ、ということで(なかなか手の込んだやり方、心憎い演出ですね)、ブルース・リーがいかにこの映画に全精力を注ぎこんだか改めて思い知らされるエピソードで(撮影中でも、スタッフにいろいろと提案・注文するなど全神経を集中させていました)あり、この映画の大ヒットを確信していたことがうかがわれます(ブルース・リー本人は世界的メガヒットをこの目で見ることなく急逝しましたが)。ブルース・リーがハリウッド時代に役をなかなかもらえず辛酸をなめた経験から、「俺は本当に凄いんだぞ。ハリウッドで主役になったブルース・リーを見てくれ!」と誇らしげに観客(とくに欧米の)にアピールしたかったのでしょう。

■個人的には「Starring Bruce Lee」

 結果として主演俳優紹介のクレジットは、2人並列して紹介することとなったのですが、それでも、左側に「ブルース・リー」と出ているので、主演は2人ということだが、より重要度の高いのはブルース・リーであると認識できるようには、一応なっているようです。英語表記は、日本語と違って横書き(左→右)なので、欧米人観客が視線を追う場合まず左側から目が向くはずです。そうなるとより主演のグレードが高いのはブルース・リーということになりましょうか。そもそも寺院の庭先でのサモ・ハン・キンポーとの試合、格闘技の神髄について「Don’t think. Feel.」などと説教するシーン等ブルース・リー主導でストーリーが流れていたので、当然といえば当然ですが。あり得ないことですが、仮にこれが「Starring John Saxon, Bruce Lee」だったらどうでしょう? 明らかに違和感を覚えてしまいます。いずれにしろ、個人的には「Starring Bruce Lee」としたほうがすっきりしてよかったのではと思います。■

yazohchi

作成者: yazohchi

ブルース・リーファンを35年以上も続けています。これからも彼の願っていた世界平和、心の平穏などを受け継ぎ、次世代へとつなげたいと思います。そんな思いがあってブログをはじめました。

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